標準化
標準化について
高速PLCは、これまで世界中に複数の方式が存在しそれぞれの方式が、同一電力線上で通信した場合、お互いの通信信号をノイズと認識するため、全体のPLC通信システムが完全に機能しなくなるといった課題がありました。そこで、高速PLC対応商品を市場で普及させるためには、高速PLC機器が相互に接続・共存させる標準化が、最も重要な業界の課題でした。
特に、通信インフラとして国内及び海外展開を図るためには、国際標準であることが望ましくこれらの背景からHD‐PLCアライアンスではIEEE国際標準化審議に参画し、HD-PLC方式は、2011年1月国際標準規格IEEE 1901として承認されるに至りました。
その後、IEEE 1901標準規格は、ITU-TのG.hn規格(注1)におけるIEEE 1901 共存仕様(ISP)の推奨化や米国NIST(注2)で策定された米国スマートグリッド調達ガイドラインとしてIEEE 1901標準共存仕様の必須化として波及しています。加えて、国際標準IEEE1905.1としてホームネットワーク規格を統合するコンバージェンス規格(注3)にも新たに承認されました。
一方、国内においては、TTCホームネットワークアライアンス通信I/FガイドラインTR-1043(注4)にIEEE 1901 PLC(HD-PLC)が規定され、またHD-PLC 3 Complete 及びHD-PLC 3 inside技術が、 ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェースとしてTTCJJ-300.20及びJJ-300.21(注5)に規定されるなど、国際標準規格化による国内標準化へのシナジー効果が広がっています。また、DLNAアライアンス(注6)においても承認を受けています。
更に、世界の生産工場である中国において、中国国家規格にHD-PLC規格をコア技術として埋め込むことで、中国から全世界に輸出される家電製品、スマートグリッド関連機器への搭載を目指し、2009年から中国IGRSアライアンス(注7)と連携することで、API(アプリケーション インターフェイス)技術(注8)を標準規格としてパック化し、4年の歳月を経てようやく2012年12月に中国国家規格GB/T29265.305-2012(注9)として承認されるに至っています。
また、昨今のIoT向けインフラへの適用にあたっては、更なる通信距離の拡大および通信速度の向上が求められています。これらを実現するために、ユースケースに応じて使用する周波数帯域を柔軟に変更する技術を、IEEE 1901aとして国際標準化を進めています。2019年3月の規格承認を目指しており、HD-PLC活用の幅が更に広がることが期待できます。
この様に、HD-PLCアライアンスは、HD-PLC方式がIEEE 1901はじめ各標準規格に承認され、HD-PLCを活用したビジネス展開を一層容易にする環境構築を図っています。
これらの標準化承認されたHD-PLC方式は、今後、さまざまな分野で活用されることが期待されています。
地域/国 | 標準化機関 | 認証規格 | 時期 | 波及効果 |
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全世界 | IEEE 1901 | IEEE 1901: 電力線通信規格で承認 | 2011年1月 | 規格に対応した商品化が可能となり、新市場開拓 |
全世界 | DLNA | デジタル家電ネットワークDLNAの標準方式で承認 | 2012年3月 | 映像、音声機器等DLNA機器への採用促進 |
全世界 | ITU-T | 共存仕様(IEEE1901-ISPと同等)をITU-T G.9972として承認 | 2010年6月 | 共存仕様によるPLC業界の健全な発展 |
中国 | 国家標準規格 | IGRS-PLC(HD-PLC)が中国国家標準(GB/T 29265.305-2012)として承認 | 2012年12月 | 中国内外での採用加速 |
米国 | 米国NIST | NIST スマートグリッド機材調達ガイドラインにIEEE 1901必須化を承認 | 2013年1月 | 米国政府調達に対応した商品提供が可能 |
全世界 | IEEE 1905.1 | ホームネットワーク規格を統合するコンバージェンス標準化 ・ Ethetnet IEEE 802.3、無線LAN IEEE802.11、PLC IEEE 1901を承認 |
2013年3月 | ルータ等ネットワーク機器にPLC搭載を加速 |
日本 | 国内 SmartHome | HN通信IFガイドラインTTC TR-1043にIEEE 1901明記 | 2012年11月 | 国内家電への採用を加速 |
日本 | TTC | HD-PLC 3 Complete 及びHD-PLC 3 insideが、ホームネットワーク通信インタフェース 規格TTCJJ-300.20(広帯域 Wavelet OFDM PLC)及びJJ-300.21(広帯域 Wavelet OFDM PLC 省電⼒化⽤拡張機能)として承認 | 2013年11月 | ECHONET Lite向け通信インタフェース として国内家電への採用を加速 |
- 注1:ITU-TのG.hn規格
G.hnは,国際電気通信連合(ITU)が標準化作業を進めているホームネットワーク仕様。データ伝送路として,同軸ケーブル,電話線,電力線を使用する。 Home Grid Forumで、ITU-T(国際電気通信連合標準化部門)を舞台に、有線を使ったホームネットワーク向け統一規格「G.hn」の策定を進めてきた。2010年6月には物理層を規定した「G.9960」と、MAC層を規定した「G.9961」、共存仕様の「G.9972」が承認された。現在MAC層の規定議論中で最終規格化には至っていない。 - 注2:米国NIST
アメリカ合衆国の国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology, NIST)は、アメリカ合衆国商務省配下の技術部門であり非監督(non-regulatory )機関。次世代送電網「スマートグリッド」の標準化に向けた枠組み「NIST Framework and Roadmap for Smart Grid Interoperability Standards, Release 1.0」を正式に発表し、(スマートグリッドの狙いや構想,標準規格,規格案)を正式に発表した。米国におけるスマートグリッド関連の機器や装置は,この枠組みにある標準規格に基づくと思われる。
(ホームページ:http://www.nist.gov/index.html) - 注3:国際標準IEEE1905.1ホームネットワーク規格を統合するコンバージェンス規格
複数のホームネットワーク技術を束ねる統合レイヤーを規定。この統合レイヤーは、IEEE 1901(PLC)、IEEE 802.11(WiFi)、IEEE 802.3(イーサーネットLAN)、およびMoCA1.1(同軸)のような異なる種類の無線や有線ネットワーク間でデータや制御の共通化を図る規格。IEEE 1905.1は、異なる無線や有線のネットワーク技術を組み合わせることで、宅内で一つのネットワークを構築することを可能としこれにより、輻輳を制限し信頼性を維持するために異なる通信パスを利用することで、ネットワーク全体のスループットを向上させ、複数の映像ストリーミングを同時配信するなど、利用者に役立つサービスを提供することが可能となる。 - 注4:TTCホームネットワークアライアンス通信I/FガイドラインTR-1043
一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)次世代ホームネットワークシステム専門委員会で策定されたTTC技術レポート。スマートグリッドやスマートハウスの実現で活用されるであろうHEMS(Home Energy Management System)と住宅内機器を接続する標準インターフェイスであるECHONET Lite規格の下位層通信インターフェイスを実装するためのガイドラインとして規定された。
(ホームページ:https://www.ttc.or.jp/application/files/7215/5321/8933/TR-1043v5.pdf) - 注5:TTCJJ-300.20及びJJ-300.21
ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェースとして、2013年11月にTTCが規格化。HD-PLC 3 Complete がTTCJJ-300.20 (広帯域Wavelet OFDM PLC ) 、HD-PLC 3 inside がJJ-300.21 (広帯域Wavelet OFDM PLC 省電力化用拡張機能)にあたる。それぞれ下記に公開。
TTCJJ-300.20
https://www.ttc.or.jp/application/files/7315/5418/7623/JJ-300.20v1.1.pdf
TTC JJ-300.21
https://www.ttc.or.jp/application/files/7915/5418/7667/JJ-300.21v1.pdf - 注6:DLNAアライアンス
DLNAガイドラインを制定し家庭内LAN(ホームネットワーク)を用いてAV機器やパソコン、情報家電を相互に接続し、連携して利用するための技術仕様を策定、利便性を普及推進する業界団体。
(ホームページ:http://jp.dlna.org/) - 注7:中国IGRSアライアンス
レノボ社やTCL社など中国国内の電子情報大手企業によって3C共通基盤技術の仕様策定を目的に創立された標準化団体である。現在、大手テレビ企業6社、中国電信などの電話会社、通信機器大手、国家電網公司など合計180社(2013年6月現在)が加盟している。IGRS規格は、中国国家標準として認定後、ISOとIECが2006年7月に国際標準の正式プロジェクトとして認定し、ISO/IEC 14543-5が発行されている。
(ホームページ: http://www.igrs.org/) - 注8:API(アプリケーション インターフェイス)技術
APIとは、通信物理層であるHD-PLCと、データなどのコンテンツを伝送制御するアプリケーション層の間に位置するインターフェイス層である。APIにより、HD-PLCの通信機能がアプリケーションソフトなどから制御操作が容易となる。 - 注9:中国国家規格GB/T29265.305-2012
国家標準化管理委員会の一部となっている中華人民共和国規格協会により規定され中国国家標準(National Standards)としてのGB規格等を制定。
GB/T29265.305-2012は、HD-PLC規格の中国認定番号。
GB規格は強制規格、GB/T規格は推奨(任意)規格である。