高速PLCには複数の方式が存在します。それぞれの方式が同一電力線上で混在した場合、お互いの通信信号をノイズと認識するため、各方式において通信が困難になるという課題がありました。そこで、高速PLC対応の製品を市場で普及させるためには、同じ方式のPLC機器は相互に接続し、異なる方式のPLC機器は互いに影響を及ぼすことなく共存することが求められました。
特に、通信インフラとしてグローバルに展開するためには国際標準であることが望ましく、当アライアンスも当初よりIEEE国際標準化の活動に参画してまいりました。その結果、2010年12月、HD-PLC方式は国際標準規格IEEE 1901として承認されました。
その後、IEEE 1901標準規格は、ITU-TのG.hn規格(注1)におけるIEEE 1901共存仕様(ISP)の推奨化や米国NIST(注2)で策定された米国スマートグリッド調達ガイドラインにおけるIEEE 1901共存仕様の必須化として波及しています。加えて、IEEE 1905.1としてホームネットワーク規格を統合するコンバージェンス規格(注3)にも新たに承認されました。
一方、国内においては、TTCホームネットワークアライアンス通信I/FガイドラインTR-1043(注4)にHD-PLCが規定され、また、HD-PLC3 CompleteおよびHD-PLC3 inside技術が、 ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェースとしてTTC JJ-300.20およびJJ-300.21(注5)に規定されるなど、国内における標準化活動へのシナジー効果も広がっていきました。その後、DLNAアライアンス(注6)においても承認を受けています。
さらに、中国国家規格にHD-PLCをコア技術として埋め込むことで、中国から輸出される家電製品、スマートグリッド関連機器への搭載を目指し、2009年からは中国IGRSアライアンス(注7)と連携することで、API技術(注8)をパック化し、2012年12月に中国国家規格GB/T29265.305-2012(注9)として承認されるに至っています。
また、昨今のIoT向けインフラへの適用にあたっては、さらなる通信距離の拡大および通信速度の向上が求められています。ユースケースに応じて使用する周波数帯域を柔軟に変更するHD-PLC4技術が、2019年5月にIEEE 1901aとして承認され、HD-PLCの活用の幅がますます広がることが期待されています。
HD-PLCアライアンスは、HD-PLC方式がIEEE 1901を始めとする各標準規格に承認され、HD-PLCを活用したビジネス展開がより一層拡大する環境の構築を図ってまいります。
地域/国 | 標準化機関 | 認証規格 | 時期 | 波及効果 |
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全世界 | IEEE 1901 | IEEE 1901: 電力線通信規格で承認 | 2010年12月 | 規格に対応した商品化が可能となり、新市場開拓 |
全世界 | DLNA | デジタル家電ネットワークDLNAの標準方式で承認 | 2012年3月 | 映像、音声機器等DLNA機器への採用促進 |
全世界 | ITU-T | 共存仕様(IEEE1901-ISPと同等)をITU-T G.9972として承認 | 2010年6月 | 共存仕様によるPLC業界の健全な発展 |
中国 | 国家標準規格 | IGRS-PLC(HD-PLC)が中国国家標準(GB/T 29265.305-2012)として承認 | 2012年12月 | 中国内外での採用加速 |
米国 | 米国NIST | NIST スマートグリッド機材調達ガイドラインにIEEE 1901必須化を承認 | 2013年1月 | 米国政府調達に対応した商品提供が可能 |
全世界 | IEEE 1905.1 | ホームネットワーク規格を統合するコンバージェンス標準化 Ethetnet IEEE 802.3、無線LAN IEEE802.11、PLC IEEE 1901を承認 |
2013年3月 | ルータ等ネットワーク機器にPLC搭載を加速 |
日本 | 国内 SmartHome | HN通信IFガイドラインTTC TR-1043にIEEE 1901明記 |
2012年11月 | 国内家電への採用を加速 |
日本 | TTC | HD-PLC 3 Complete 及びHD-PLC 3 insideが、ホームネットワーク通信インタフェース 規格TTCJJ-300.20(広帯域 Wavelet OFDM PLC)及びJJ-300.21(広帯域 Wavelet OFDM PLC 省電⼒化⽤拡張機能)として承認 | 2013年11月 | ECHONET Lite向け通信インタフェースとして国内家電への採用を加速 |