HD-PLCTMは高速電力線通信技術の一つであり、国際標準規格IEEE 1901として認定されています。この技術を使うことで、電力線に限らず制御線や同軸線などの様々な線を通信線として活用でき、LANケーブルなどの通信用の線を新たに引き回すことが不要となるため、低コストでネットワークを構築可能です。
この技術は、電気と情報信号の周波数の差を利用しています。電気は50Hz/60Hzという低い周波数ですが、情報信号には2MHz~28MHzの高い周波数を利用しています。これにより、電気と情報信号が干渉することなく、同じケーブルで両者を伝送可能です。
この技術により、例えば、1本の電力線でIoT機器への電力供給と、機器のインターネット接続の両方を実現することができます。さらに、スマートビルディングやスマートファクトリーなど、大規模ネットワークを必要とするアプリケーションにも適用可能であり、既設のケーブルを活用した高速ネットワークを実現できます。
HD-PLCとは、High Definition Power Line Communicationの略で、高速電力線通信技術の一つです。
電力線通信の仕組みは、電力会社から供給される交流電源周波数(50Hz/60Hz:図①)に、短波帯(2MHz~30MHz)に変調した情報信号(図②)を非常に小さな電圧として重畳し(図③)、送信します。交流電源と短波帯の周波数は互いに干渉しないため、受信側では情報信号のみを分離(図④)し取り出すことが可能です。
また、HD-PLCの信号は暗号化されているため、第三者による盗聴が非常に困難となっており、セキュリティ面でも安心して利用できます。
既設のケーブルを活用することで、LANケーブルの新規配線が不要となり、ケーブルやHUB(100メートル以上の配線の場合に設置)といった機器のコストだけでなく、配線工事の費用も低減可能です。
IoT化が進む中、データの可視化や機器制御の目的で扱うデータ量も拡大しており、RS485/RS422/RS232Cに代表される産業用のシリアル通信では速度不足となることが考えられます。HD-PLC技術を適用することで、同じケーブルをそのまま使用し、通信速度を向上させることが可能です。
地下空間やトンネル、エレベーターなど、無線の届きにくいエリアにおいて、既設の配線を利用してネットワークを構築可能です。このようなエリアでは配線工事が大がかりなものとなり、長工期・高コストとなる傾向にあります。そこで、無線とHD-PLCを組み合わせたネットワークを構築することで、低コストで安定した通信環境を実現できます。
HD-PLCを活用することで、機器のさまざまな制御に用いる信号線の本数を減らすことが可能です。車や飛行機、船舶などにおいて、線材のコスト削減や機体の軽量化による燃費向上が見込めるだけでなく、ロボットの操作性向上や組み立て工数の削減にも貢献できます。
HD-PLCの製品は以下の2つのカテゴリに分けることができます。
開発者向けには以下が含まれます。
評価キットには、性能検証用のボードやリファレンス回路、ソースコードなどが含まれています。
半導体IPコアには、PLC通信のPHY、 MACおよびファームウェア(サンプルアプリケーションを含む)などが含まれています。
エンドユーザー向けには以下が含まれます。
アダプターには、電力線や同軸線、ツイストペア線など、それぞれの線に対応した製品があります。また、イーサネットやRS485など、さまざまな機器と接続可能な入出力のポートも備えています。
また、設計開発や現場設置に役立つ測定器や治具などもあります。
欧米諸国では、石材やレンガブロックなどの建築資材利用の住宅事情を背景に、配線工事の不便さや無線の電波が届きにくいことによる通信障害の健在化等の理由により、早くから電力線通信の活用が進められてきました。現在では、高速電力線通信を利用した宅内インターネットはもとより、通信事業者によるIPTVサービスや、ケーブルテレビ放送事業者によるインターネット複合サービスなどにおいても活用されており、一般家庭向けのみならず、B2B用途も含め、数千万台の市場規模となっています。
⼀⽅、日本国内では、以前は450kHz以下の周波数を利用した低速の電力線通信のみが商用認可されていました。その後、高速通信のニーズの高まりにより、2006年10月から短波帯(2M~30MHz)を使用した高速電力線通信の屋内利用が法制化され、現在、HD-PLC関連機器の市場は累計400万台を超えるまでに成長しています。2013年9⽉には、屋外利⽤(⼀部限定)に関する法制化もなされました。さらに、無線通信の利用拡大に伴う、干渉やセキュリティ対策としてのニーズも高まっており、今後、⾼速電力線通信の適用範囲はさまざまな分野に広がるものと想定されます。
IoT/DX/GX時代を迎え、ビル・⼯場のほか、地下空間やトンネル、船舶内での通信など、従来通信環境の構築が困難であった場所でもネットワークが必要とされています。HD-PLCは、既設のケーブルを利用しつつ、通信パケットを多段に中継するマルチホップ機能を備えており、大規模かつ多くの端末によるネットワークを比較的安価に構築できる通信⽅式として、そのようなシーンでの活用が期待されています。特に、効率的な電力需給バランスの提供や省エネをキーワードとした、スマートグリッド、スマートシティ、EMS(Energy management system)などの分野において、HD-PLCの果たす役割はさらに重要度を増しています。
HD-PLCアライアンスは、HD-PLC技術の普及拡大に努め、一人ひとりの快適な生活の実現に貢献してまいります。